半分のさつまいも「半分のさつまいも」を読んで2002.2月19日(火) 初めてのオークションで、お客様が出来ました。 お送りする前にもう一度読み直して、二度と会えない本にお別れをしようと、読み出しました。 前に読んだときは忙しい中で寝る前の何分か、細切れに読んでいましたので、本当の中身がわかっていなかったようです。 今日読み返しましたら、涙が後から、後からでてきて、ティシュをそばにおいて、拭きながら何もせずに一気に読みました。 「半分のさつまいも」 海老名香葉子(えびなかよこ)作 プロローグ・空 青く澄んだ空。 雲が流れる空。 どんよりとくもった空。 本所堅川〈現・東京都墨田区立川)の焼け跡で、空をあおぐと、わたしはいつでも、家族にあうことができました。 「みんなあーっ!」 空にむかって声をかけると、 「どうしたの?」 と母の声がします。 「かよ子は強い子よ。泣いちゃだめ。かよ子が泣くと、みんなも悲しくなるわ。」 知らぬまに、涙をいっぱいためているわたしに、母がいいます。 いちばん最初に返事をしてくれるのは、いつも母でした。 「かよ子、がんばるんだよ。」 こんどは、父の力強い声です。 「おばあちゃん!」 わたしがよぶと、 「ほんとうに、かよ子はえらい子だこと。」 祖母が、やさしくいいます。 --- 中 略 --- 雨の日は、いつもより悲しいことが多いのですが、みんなに、心の中を話すことができません。だから、天気のよい日、私は、雨の日の分も、空にむかって話しかけるのです。 いまはもう焼け跡になってしまった。わたしの家の前を通って、隅田川のほうまでつづく一本道・・・・・。 その西のつきあたり、一面の焼け野原の先の先に、夕日がしずみます。まるで一本道が、夕日をすいこんでしまったかのように、空がいっきに暗くなっていきます。 (わたしひとりで、いきていかれるかしら・・・・・。) 真っ黒な空に、星がまたたきはじめるまでのひととき。なんともいえない不安が、おしよせます。 本所堅川の焼け跡で見る。あかね色の空は、とてもきれいです。 けれども、思い出が、多すぎるのです。 前書きの一部分です。 戦争を知らない世代が多いこの時代にこの本の本当の姿がわかるかしら? 昭和19年 5年生の時に家族と別れ親戚に疎開した。 昭和20年3月10日の東京大空襲で肉親6人を炎の海の中に失しないました。 食べるもののない生活は人々の心にも余裕がありませんから、家族でもない女の子を預かる事は大変なことでした。 おなかが空くと言う事は言葉にはいえないすさまじい事だと思います。 其の中で生きていくことはどんな事か? おかあさんに 「かよ子は強い子よ。泣いちゃだめ。かよ子が泣くと、みんなも悲しくなるわ。」と言われたことを守って生きていった。 お母さんの愛情がこの小さな女の子を支えていた。 この本は海老名香葉子さんが、近くの女子短期大学の講演に来られまし折、手にすることが出来ました。 講演は、わかりやすい身近な言葉で、本当に生きてきた姿を、ありのまま話され、言葉も出ないくらい驚きと感動を覚えました。 一人でも多くの方に読んでいただけたらよいと思いました。 ジャンル別一覧
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